歌物を唄うには???

先日、とあるプロのピアニスト&ドラマーとご一緒させていただく貴重な機会がございまして、その時に演奏したのがWhat’s new。

ボーカルだけでなく、デクスター・ゴードンも好んで演奏したバラードの名曲ですね。

コルトレーンもレコーディングしています。自分がテナー吹きなんで、テナーばっかりですいません。

でもこの曲って、超ムズイんですよね。

サビも平歌と同じメロディーとコード進行が4度上がるだけだから、ずーっと同じ8小節のコード進行とメロディーを都合4回繰り返すことになるんで、なにしろ間が持たない。

間が持たないからバラバラと音数で埋めてしまい、全体でまとまりの無い、だらしない演奏になっっちゃうんです。
あ、私の場合は、ですけどね (;´д`)トホホ

その時、ピアニストに
「8小節の中にメジャー IIーV でメジャー解決、マイナー IIーV でメジャー解決、マイナー IIーV でマイナー解決があるんだから、なんでもかんでもオルタード系で吹かないように。そもそもこの曲がメジャーだって分かってる?」
というアドバイスを頂きました。

ちなみにコード進行はこうなっています。

私みたいなシロートはメジャーIIーVでも、バカの一つ憶えみたいにオルタードテンションを入れればカッコいいと思ってますが、それじゃダメなんですね。オルタードって本来はマイナーに解決するための音だから。

ちなみにコード進行は奏者やアレンジによって変わるのはジャズのお約束。

一緒に演奏したベーシスト(アマチュア)の方は、有名な某曲集を見て弾いていたんですが、その本では冒頭の部分のベースラインが有名なアレンジの下降クリシェになってます。
それについても
「そこのベースラインの下降は全く不必要な情報。毎回下降形を弾く意味は無いよ。ピアノが何やってるか聞いてね」
って仰っていました。
確かに毎回やられると鬱陶しいw

この曲って片想いのトーチソングだしマイナーっぽく聴こえるから勘違いしちゃうけど、ドアタマがトニックメジャーで始まって、最後もメジャーで終わるメジャーの曲なんですよね。2小節目のメジャー IIーV のメロディーの最後がb9からVIメジャーに解決するあたりも騙され原因のひとつ。

で、困った時のネタ探しで名演を色々聴いてたら、さすがにプロはメジャー感をちゃんと出す演奏をしています。

特に、有名なこの演奏。

曲の歌詞がコードのメジャー、マイナーとバッチリ対応していて、それをヘレンメリルは唄い方で見事に表現してるし、クリフォードのアドリブも、そうなっています。

ちなみに歌詞はこれ。

What's new?
How is the world treating you?
You haven't changed a bit
Lovely as ever, I must admit

What's new?
How did that romance come through?
We haven't met since then
Gee, but it's nice to see you again

What's new?
Probably I'm boring you
But seeing you is grand
And you were sweet to offer your hand.
I understand. 

Adieu!
Pardon my asking what's new
Of course you couldn't know
I haven't changed, I still love you so

細かく言うと、最初のトニックメジャーのC△は、昔も今も好きな片想いの相手にばったり会った嬉しさのWhat’s new?を表しています。
その後の微妙な心の動きはマイナー IIーV とメジャー IIーV を使い分けることで表現しています。
Lovely as ever~は、女性シンガーの場合はHandsome as ever~にするのがお約束。

秀逸なのが、平歌のリピートでアタマに戻る時にはメジャー IIーV だったのが、 サビの最後で頭のC△にもどるところのメロディーがマイナーb5でコードもマイナー IIーV になっているところ。
その後の平歌の歌詞が、いままでは全部What’s new?で始まっていたのが、ここだけAdieu、つまり「さよなら」になっています。
さよならを言うAdieuのコードもC△だけど、さよならの寂しさを前の IIーV をマイナー進行にすることで表現してるのね。
そこの歌詞は I understand.
なにをUnderstandしてるかといえば「昔も今も俺は眼中にないよね」ってこと。悲しい(ToT

こういった歌詞とコードの組み合わせは歌曲ではお約束で、My Funny Valentineなんかは、それがはっきりわかります。
古くはシューベルトの魔王も、魔王のパートは全て長調で、父親のパートは短調。
陽気な魔王だことw

デクスター・ゴードンが映画’Round midnightの中で「歌詞を忘れたからAutumun in N.Yが吹けない」って言うシーンがありましたが、つまりはこーゆーことなんですね。

What’s new は何度も聞いたり演奏した曲だけど、歌詞をまったく意識してませんでした。

ネイティブは歌詞が無意識に入ってくるからノン・ネイティブとは演奏も違ってくるのかもしれませんね。
知らんけど。

やっぱりセンスがなくて音痴のシロートってやーねー (;´д`)トホホ

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