「投資を始める時に読んでおく本」として良く勧められる「ウォール街のランダムウォーカー」。
ところがですね、この本を頭から通読したという人にお目にかかったことがありません。
「長い、細かい、意味不明」の三拍子が揃った本なので、投資のためよりも熟睡するためにおススメしたくなっちゃうような本なんです。
私がこの本を最初に手に取ったのは2007年。ちょうどリーマンショックの頃でした。
あの当時は「100年に一度」と言われる大暴落に直面して、なにか糸口を得ようと色々な投資関連の本を読み漁ってたんですね。
そんな時でもやっぱりこの本を通読できず、あちこち拾い読みしていました。
といってこの本が役に立たなかったわけではなく、むしろ、リーマンショック後に資産を増やすために大きく役立ったのは事実です。
ですので「読んだ方がいいか?」と聞かれたら「絶対に読むべき」と私は答えます。
近頃流行りのFIRE(Financial Independence and Retire Early)関連の本に書いてあることは、全てこの本が原典になっています。FIRE関連の中には不十分な記載の本もあるので、それを読むならこれを一冊持っていれば事足ります。
今日は投資のバイブルと言われ続ける「ウォール街のランダムウォーカー」の「正しい読み方」についてお話します。
どーゆー本なのか?
ひとことで言えば、投資に関する歴史と、さまざまな投資手法の評論本です。
17世紀のチューリップバブルから現代に至るまでの投資にまつわる主だった大事件を紹介し、あらゆる投資手法を取り上げ、その論理的根拠を説明しながら「なぜ絶対に成功する投資手法が無いのか」という絶望的な話が延々と続きます。
普通、投資に関する本を読む人って「儲かる投資法」を知りたくて読むんですけど、それを否定する話ばかりが延々続くのですから、読む気が失せるのも当然ですね。
この本で首尾一貫している主張は「株価なんてものは酔っ払いの千鳥足(ランダムウォーク)だから、予測なんて無理!」ってことです。
その事例と説明が400ページくらい続いて、最後の70ページくらいに「正しい投資法」が紹介されるんです。
この、最後の70ページに書いてあることが非常に重要なので「投資のバイブル」と言われているんですが、ほとんどの読者はそこまでたどり着けず、書棚の肥やしにしてしまうんですね。
ですから、この本は「絶対に最初から読んではいけない」んです。
読むべきところ
私が持っているのは第9版ですが、今の最新版は12版です。
ここでは手持ちの第9版で説明しますが、大事な部分は時代に関係ない普遍的な箇所なので、問題はないでしょう。
この本で最初に読まなければならないのは、第四部「ウォール街の歩き方の手引き」です。
まずここから読んでください。
といっても、ここだけで100ページはあります。
この著者は、どうも「すべての事例と事実を万全に説明したうえで結論を述べる」という性格のようで、この100ページも、相当にまだるっこしいです。
気の短い方は、第四部の中でも第13章「投資家のライフサイクルと投資戦略」から読みましょう。
投資家のライフサイクルと投資戦略
この13章で、それまでの390ページを費やして著者が解説してきたことの結論が、やっと出てきます。
それは「アセット・アロケーションの四つの基準」として書かれている、
・リスクとリターンは正比例する
・株式も債権も投資期間が長いほどリスクは低下する
・ドル・コスト平均法は株式・債権投資のリスクを軽減する
・リスクに対する態度とリスク許容度は区別しなければならない
に「リバランスによってリスクを減らしリターンを高める」というノウハウが加わって、全部で5つの「投資の原則」です。
どれもどっかの投資本に書かれているようなことですが、その原本が、この本なんですね。
この著者は、この答を導いた事例と証明に400ページも割いてきたんです。
ですから、先に答えを呼んで、それから自分が知りたいところや疑問に思ったところを遡って拾い読みするのが、この本の正しく効率的な読み方と言えるでしょう。
FIREの基本・ライフサイクルファンド
近頃話題のFIREの全てが第13章の7「ライフサイクルに合わせた投資の手引き」に書かれています。
「年金商品はしっかりした会社を選ぶこと」では年金保険の問題点について説明されていて、
それに続く「自分で運用する場合」がFIREの基本原理である「インデックスファンドに投資して、毎年4%づつ取り崩せば、投資元本は一生涯減る事はない」ということの説明です。
第9版では「4.5%づつ取り崩す」となっていますが、現行の第12版では「4%」になっています。
ここだけで、世の中に出回っているFIRE本に等しいだけの価値があります。
ウォール街に打ち勝つために
終章である第14章は「ウォール街に打ち勝つための三つのアプローチ」で、
・思考停止型ーインデックスファンドを買う
・手作り型ー有望銘柄を探す
・人に任せるー専門家を雇う
の三つが説明されていますが、結局、著者が進めているのは「思考停止型ーインデックスファンドを買う」です。
この本の真の価値
投資のバイブルと言われる「ウォール街のランダムウォーカー」の内容を一言で要約するなら
「若いうちからコツコツとインデックスファンドで積み立て投信をして、老後に備えよ」
となるでしょう。
この本の真価は、それだけのことを言うのに450ページもかけて説明しているところにあります。
市場はバブルとバブル崩壊を繰り返しながら成長しつづけていることは歴史上のの事実で、バブルの時には誰でも投資で資産を増やすことができますが、ほとんどの人はバブル崩壊で、増やした資産を失い、時にはそれ以上の損失を出してしまいます。
そして、いつがバブルなのか、どこで崩壊するのかは誰にもわかりません。
それを説明するために、この著者は膨大なページを割いています。
バブル崩壊で資産を大きく損なう原因は「冷静な判断力を失って、パニックになって周囲と一緒に走り出す」からなんですね。
著者は、それを防ぐための理論と、その根拠を延々と説明しているんです。
昔から「人の行く裏に道あり、花の道」という投資の格言があるように、投資は「他人と同じことをしてはいけない」のです。
2000年頃に中国株投資をやっていた人や、不良債権処理の最中に投資用不動産投資を買っていた人は「中国株はいつ中国共産党が市場封鎖して紙くずになるかわからない」「日本は人口が減るんだから、不動産は絶対に儲からない」と、周囲からバカにされていました。
そのタイミングで投資をしていたから、その後に中国株ブームやサラリーマン大家ブームで資産を大きく増やしました。
逆にブームでうまれたバブルの時に投資を始めた人は、その後のバブル崩壊で損をしました。
損をするのは、いつも「周りと同じことをする人」なんです。
投資を始めようとすると「投資は絶対に失敗する」と、沢山の人が助言をくれます。
それは、多くの「周りと同じことをする人」が「みんなと同じことをして失敗した」経験があるということです。
「投資に失敗した多くの人」の仲間入りをしないためには、多くの人がやっていることをしてはいけないんですね。
そのための理論と根拠を説明しているのが「ウォール街のランダムウォーカー」で、それこそが不朽の名著と言われる由縁です。
この本を買ったら第四部だけを読み、あとは日頃のニュースで気になったことや、自分の投資法に不安が生じた時に、この本のどこかに同じことが書いていないかを探すという読み方が正解だと、私は思います。
投資で悩んだ時の最良の手引書であることが、この本の真価だと思います。
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