神事の多い沖縄には個性的な祭事が数多くあります。今日はうちの近くで行われている一風変わった祭事のお話。
超危険!アカマタ・クロマタ
アカマタ・クロマタに関する話は有名なんでご存じの方も多いと思います。
アカマタ・クロマタは豊年祭の主役となる神様で、ニライカナイから来た来訪神。
それが各家を一軒一軒まわって歩くのだそうです。
西表島東部の古見が発祥で、小浜島、 新城島の上地島、石垣島の宮良に伝わった祭事で、既に廃村になった西表島北部や新城島の下地島でも行われていたそうです。
この祭事は非常に厳格なきまりの中で行われていて、祭りの全容を知るのは限られた一部の人だけ。
それ以外の人は地元民といえども一部しか見れません。
祭りに関することは他人に話してはならず、また祭りについて聞くことも禁止。
今でこそ観光客にも一部公開されていますが、昔は豊年祭の時は観光客が宿から出ることを禁止され、こっそり見ているのが見つかると大変な目にあったとか。
上地島のアカマタ・クロマタは非常に厳格で、島民の嫁などの家族であろうと島外出身者は全て島から追い出されます。
上地島のある新城島には普段から限られた人しか入れない人魚神社があり、それ以外の地域でも立入禁止、撮影禁止の場所があちこちにある謎の島です。
もちろん写真やビデオの撮影は禁止で、盗撮していた人が見つかって袋叩きにされたり、カメラを壊されたりといったことも普通だったそうです。
もちろん今でも撮影は禁止です。
それでも命知らずの人はいるもので、ネットを探すといくつかの写真が見つかります。
上は宮良のもの。下は古見の物だそうです。
このアカマタ・クロマタは地区によって違いがあって、発祥地の古見ではアカマタ・クロマタ・シロマタの三神、上地島ではアカマタ・クロマタとその子神の四神で行われるそうです。
アカマタの語源はアカムトゥ(あかおもて:赤面)で、アカマタは赤面、クロマタは黒面、シロマタは白面を被っています。
宮古島の奇祭、ぱーんとぅ・ぷなは
私はアカマタ・クロマタを見たことはないんですが、それに負けない奇祭が近所の部落で行われています。
それが「ぱーんとう・ぷなは」。ユネスコの無形文化遺産に登録されています。
これは宮古島の島尻地区と上野原地区でおこなわれますが、両者の内容はかなり異なります。
有名なのは島尻のぱーんとぅ・ぷなはで、ちょうど今の時期(10月)に行われます。
ちなみに昨年2020年はコロナで三密を避けるために中止になっています。
全身にキャーンという蔦を巻いて強烈な悪臭がする泥で覆われた「ぱーんとぅ」という3体の神様が、誰彼構わず人モノ構わず泥を塗って歩くという祭事です。
これがぱーんとぅ
容赦なく泥を塗られます。
子供は阿鼻叫喚
新築の家にもどんどん上がりこんで家中を泥だらけにします。
国家権力への忖度も全く無しw
恐ろしいですね。
明るいぱーんとぅ・ぷなは
ぱーんとうは、数百年前に、島尻地区にあるクバマ(クバ浜)という海岸にクバの葉に包まれた黒と赤の仮面が漂着し、村民はこれを来訪神として崇拝したのが起源だそうです。
三体のパーントゥは親(ウヤ)パーントゥ、中(ナカ)パーントゥ、子(フファ)パーントゥで、黒と赤の仮面の来訪神とその子神というのが、アカマタ・クロマタを思わせますね。
島尻部落の青年が扮した3体のぱーんとぅに塗られる泥は、昔は産湯や死者のお清めの水を汲んだ「ンマリガー」(生誕泉)と呼ばれる井戸の底に溜まった泥。ですから、この泥を神様に塗られると厄払いになるんですね。
だから子供や新築の家、新車などを持っている人は、わざと泥を塗ってもらいに来るんです。
ぱーんとぅ・ぷなははアカマタ・クロマタのような厳格さや秘匿性はありません。
昔はぱーんとぅがスクーターに乗って走り回ってたそうで、さすがに今ではノーヘルでのスクーターはやってませんが、まぁ、それぐらい開放的で明るい祭事なんですね。
唯一隠されているのが開催日。
昔は自治会のホームページなどに掲載されていたんですが、今では開催日は事前に公開されません。
これには実にイヤな話がありまして。。。。
観光客に怒られた
泥を塗って厄払いをする祭事ですから、ぱーんとぅは誰にでも何にでも泥を塗りたくります。
神様ですから地元民も観光客も区別しません。みんな神様の前では平等。アタリマエです。
ぱーんとぅに扮した青年たちも、宮古人の明るく盛大なサービス精神で、観光客にもたっぷり泥を塗ってあげていました。
それを知っている沖縄好きの観光客は、ちゃんと汚れても良い恰好で来て、厄除けの泥を塗られるのを楽しみにしていました。
ところがですね、一部の観光客が「泥が染みになって服をダメにされた」「カメラに泥を塗られて具合が悪くなった」などと文句を言い出し、中にはそれを弁償しろと自治会にクレームをつける人がでてきたんです。
それがネットで広まって「観光で喰ってるくせにとんでもない」とか「事前に言わない自治会が悪い」とか「観光客であるのは見ればわかるはず」とか、もう言いたい放題の大炎上。
島尻の産業は今でも農業、漁業、畜産が中心で、観光施設も無く、観光にはほとんど依存していないんです。
わざわざぱーんとぅを見に来る環境客だって、それで島尻部落にお金を落とすことはありません。
せいぜい自販機か屋台で飲み物を買う程度。
それなのに観光客ヅラをして部落の文化に文句を言われたんじゃ、地元の人達はたまったもんじゃありません。
自治会では観光客立入禁止にしようという話まで持ち上がったんですが「開催日を告知しない、観光客は無視する、説明の看板を立てる」の三原則を決めました。そんなわけで今では開催日が告知されないようになり、観光客に見える人には泥を塗らなくなってしまいました。
リゾートの乱開発が進む宮古島ですが、観光で収入を得ている地元民はごくわずか。
観光客でにぎわっている地元の飲食店も「観光客はメンドクサイ」「地元のお客さんが入れなくなった」と、必ずしも観光客を歓迎しているわけではありません。
沖縄が好きで訪れるリピーターの方は「沖縄におじゃまする」という気持ちを持っている人が多く島民からも歓迎されていますが、「リゾートいぇ~~~い!」と来島して水着のままで買い物をしたり、島民の生活を搔き乱して「観光で喰ってるくせに文句言うな」って態度の人には、金輪際来てほしくないと思ってる島民も少なくありません。
ぱーんとぅの怖い話
これは島尻の人に聞いた話で、地元でもあまり知られていないようですが、このぱーんとぅの時に「白いオジサン」が出るんだそうです。
白い仮面をかぶっているのではなく、全身を白く塗ったオジサン。
いつでも出るわけでもないし、誰にでも見えるものではないらしいです。
たまたまそれを見た子供が白いオジサンをみたと先輩に告げたら、その先輩が一人で白いオジサンを探しに行って行方不明になってしまいました。
数日後にその先輩が、かつて風葬を行っていた場所で発見された時には、完全に錯乱状態で「まじむん、まじむん(悪霊)」と呟いていたそうで、その後も正常にもどることは無かったと。。。。
明るいぱーんとぅ・ぷなはも神事ですから、見に行くときは敬虔な気持ちを忘れずにね。
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