海で死なないために・沖縄の海を知ろう

ここ2年ほどはコロナのお陰で海難事故は減ったようですが、沖縄では毎年数十名の人が海のレジャーで命を落としています。

特に多いのがシュノーケリング中の事故です。
悲惨な例では、子供二人がシュノーケリング中に流されて、それを助けにいった父親と祖父の二人をあわせた四名が浜辺にいた母親と祖母の目の前で亡くなった事故がありました。

このような観光客による海難事故が、毎年何件も発生しています。
死亡事故に至らないものも合わせると、かなりな数になります。

その原因は、観光客は沖縄の海が内地の海とは根本的に違うということを知らないことにあります。

今回は、せっかくレジャーできた沖縄の海で不幸な事故を起こさないために、沖縄の海の特殊性についてお話します。

沖縄の海はサンゴの海

沖縄は世界でも有数のサンゴ礁の発達した地域です。
それを目当てに多くの観光客が訪れ、シュノーケリングを楽しんでいます。

しかし、このサンゴ礁の海は内地の海とは構造が全く違います。
これは沖縄の海の典型的な風景です。

手前のエメラルドグリーンにみえるところはイノー(礁湖)といって水深が2~3mの浅瀬です。
このイノーはサンゴが一番発達して綺麗なところなので、みなさんがシュノーケリングを楽しむのは、この部分です。

その先のグレーに見える部分はサンゴが発達しているヒシというところで、ここはさらに浅く、水深1m以下です。
その先の青い海になっているところがドロップオフという崖状になっていて、一気に10m以上の深みになります。

こう書くと「なるほど。イノーの中はプールみたいなものだから安全だね」
と思う人もいるかもしれません。
実は、そこに大きな落とし穴があるんです。

波の出来かたが全く違う

このサンゴ礁による地形が、沖縄独特の海を作っています。

図にするとこんな感じですね。

サンゴ礁の海では、沖からのうねりはドロップオフで波となり、イノーの中で波が立つことはありません。
これに対して内地の海は砂底で、徐々に浅くなるために砂浜近くで波ができます。

この波の出来かたの違いが観光客の判断を誤らせる大きな原因になっています。

波が無い=安全ではない

まずこの画像を見てください。こんな波の時にあなたは海に入りますか?

内地の海水浴場だったら、なんでもない波ですよね。
内地では身長くらいの波が来る海水浴場でも、みんな普通に遊んでいます。

でも、この海の普段の姿はこれです。

沖の島影で同じ場所だということがわかると思います。
実は一枚目の画像は台風二日後の海の姿です。
沖のドロップオフのところに高波が立っているのが見えますね。
海の色が白濁しているのは底の砂が巻き上げられているからです。

海底の砂が巻き上げられるほど、強く複雑な流れがイノーの中にできているのです。

このような状態では地元の人は絶対に海には入りません。

でも普段の姿を知らない観光客は、内地の海水浴場のつもりで「たいした波じゃない」「イノーの中なら安全」と、誤った判断で海に入り、海難事故を起こします。

イノーの中は安全じゃない

外洋の波によってイノーの中に入ってきた大量の海水は、当然イノーの外にでていきます。

ですから、浜辺に波が立つような時にはイノーの中は川のような流れになっています。
この流れに捕まったら最後、沖まで流されてしまいます。

このような沖に向かう流れを離岸流といいますが、その強さはオリンピックの水泳選手だろうが、フィンを付けていようが、あっという間に流されてしうほど強力です。

ヒシをこえて入ってきた大量の海水は、一番低いところから海に戻ろうとします。
波が立っているところが水の入り口で、波が無いところが水の出口です。
この海岸は右側の防波堤の影響もあって、台風の後だけでなく、大潮の引き潮の時にも右の方向にかなり強い離岸流が発生します。

このような流れの強弱や出来かたは、そこの地形、潮汐の時間やうねりの加減で変わります。
特にサンゴ礁の海は海底の構造が複雑なので、離岸流の出来かたも複雑です。
干潮の時間帯のみに離岸流ができるところも沢山あります。
海になれている地元の人は地形や潮汐で判断しますし、潮の流れを見る眼力もありますが、海に詳しくない観光客ではわかるはずもありません。

それなのに「浅瀬なら安全」という間違った知識で海に入って流されてしまい、流れに逆らって戻ろうとして体力を使い果たし、パニックになって溺死してしまうのです。

こんなとこでも危険なんです

宮古島にインギャーマリンガーデンというところがあります。
入り口のほとんどが岩で塞がれた天然のプールのような場所で中の水深は1~2m。

普段はとても安全で子供を遊ばせるにはピッタリのところです。

しかし、ここでも台風の後に観光客が流される事故が起きています。
いかにも安全そうな地形なので大丈夫だと思って入って、事故にあったんでしょうね。
流されるところを他の人達が見ていてすぐに救助が来たので、大事には至りませんでした。

なぜこんなところで事故が起きてしまったのか?
赤矢印で示したところの海の色が濃くなっていますよね?
つまり、ここが深くなっていて湾内に入った水が出ていく水路になっています。

ここは砂底なんですが、このちょっと深くなったところにサンゴがついていて、魚が多いんです。
特に赤矢印のところにはクマノミが沢山います。

魚を見つけて追いかけているうちに流れにつかまって、そのまま外に吸い出されてしまったんです。

ずーっと魚をみていると自分が流されていても気づきません。気づいた時には手遅れなんです。

台風の後は砂底でも危険

先に紹介した親子4人が母親と祖母の目の前で溺死した事例は、砂浜の海岸でした。
渡口の浜という、遠浅のとても綺麗なビーチです。

サンゴ礁もイノーもドロップオフも無い、普通の砂底の海岸。

この時も事故が起きたのは台風の後でした。
居合わせた地元のサーファーが救助に向かったのですが間に合わなかったそうです。
これだけ静かな海にサーフィンをするほどの波が立っていたんですね。
地元の人は「なんでこんな海で子供を泳がすか」と怒っていました。

ここの海岸は南に口を開けた袋状の入江になっています。
この時の台風は島の浜の南東を通過したので、この浜には外洋のうねりがモロに入っていました。

その結果、海底の形が変わって、入江に入ったうねりが沖にもどる強烈な離岸流が発生していたんですね。

このように、特に台風の後は何が海に起きているのか想像がつきません。
「せっかく観光旅行に来たんだから」という気持ちはわかりますが、台風の後の波が立っている海には絶対に入ってはいけません。
また、台風のうねりはかなり遠くからでも到達するので、遠くに台風が発生しているときでも、台風側の海岸は避けた方が賢明です。

緊急事態宣言が解除になったので、まだ泳げる沖縄に海水浴やマリンレジャーを求めて来るひとがいると思いますが、海で死なないために絶対に無理な行動は慎んでください。

知らない海でシュノーケリングをする時は、かならずガイドやサービスを頼んで、自分達だけで海に入らないようにしてくださいね。
また、一度ガイドに連れて行ってもらったポイントに自分達だけで行くのも危険です。
なぜならガイドは、その時の海況をみて安全なポイントを選んで客を連れて行っているので、いつもその状況とは限りません。
潮の干満が違うだけで海は別物になります。十分な経験と泳力があり、海況を見極めて適切な対応ができる自信が無い方は、ガイドやツアーを利用するのがベストです。

くれぐれも楽しいレジャーを悲しいものにしないようにご注意くださいね。

シュノーケリングについてもまとめてあるので、ご興味のある方はこちらも参考にしてください。

安全なシュノーケリングについて考えた

シュノーケリング道具の選び方

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