経済的に自立して早期リタイア(Financial Independence and Retire Early)というのが流行っていますね。
特に目新しい話でもなく、昔からある「楽隠居」と同じなんですが、投資信託の4%ルールを組み合わせたところが、新しいのかな?
投資信託の4%ルールとは「低コストのインデックスファンドで積み立て投資を行って毎年4%づつ取り崩していれば元金は減らない」
というものですが、これは「ウォール街のランダムウォーカー」で50年前に提唱された手法で、それが今でも有効であるということを再確認しただけのことです。
これ自体は、一人暮らしなら住居費込みの年収200万円で生活可能なので、5,000万円のインデックスファンドを保有していれば、働かなくても生きていけるという至極単純な話です。
私は株式投資と不動産投資による収入が年間生活費に達したので10年前にリタイアしました。
でも、実際にリタイアするのには、結構な勇気が必要でした。
計算上は大丈夫でも実際に仕事をやめるとなると、なかなか決断できないという人は多いと思います。
ということで、実際にリタイアして投資収益で暮らしていくに必要なあれこれついてお話しようと思います。
家計管理
投資やFIREについて相談を受けることがあるんですが、多くの人は「どうやって資金を作るか」ばかりを気にしています。
ところが「いくらあったら大丈夫なの」と聞いても明確な数字を根拠をもって答えられる人って、意外と少ないんですよね。
大概は「年間300万円あれば大丈夫だと思います」というように、ザックリとした数字しか思い描いていません。
年間300万円をインデックスファンドから得るには8,000万円が必要なんで、これだとハードルが高すぎますね。
それだけの金融資産を持っている人は仕事で成功された方が多いので、普通は仕事をやめようとは思わないものです。
逆に年収400万円くらいの人が8,000万円の金融資産を積み立て投信だけで作るのは不可能なので「なにか儲かるものを」と考えて、ハイリスク投資に手を出して失敗する危険性が高くなります。
相談者に一番多いのが「なにが一番儲かりますか?」という質問ですが、「一番儲かるものは一番危険なもの」という投資の鉄則を忘れてはいけません。
FIREの目的は「儲けること」ではなく「働かなくても生きていける状態を作ること」です。
そうなると、一番最初にやるべきことは「いくらあったら生きて行けるか」という金額を明確にすることです。
そのために必要なのことは2つだけです。
1.全ての支出を記録して、何にいくら必要かを明確にする
2.必要な金額を最小化する
1は当たり前の家計管理です。
2が大事なのは、一度、ギリギリまで切り詰めた生活を経験することで、どこにお金をかけたら自分の満足度が上がるかを明確にできるからです。
うちは夫婦二人で持ち家暮らし(ローンなし)ですが、1週間の生活費が2万円、固定費が月4万円なので、基本の生活費は毎月15万円あれば十分です。
このベースがきちんと把握できていれば、収入との差額から遊興費や投資資金を簡単に割り出すことができます。
FIREした友人をみていると、リタイア後はサラリーマン時代よりも生活費が大きく減ることが多いようです。
これは無理に節約しているのではなく、毎日会社に通勤するだけで細々とした支出、会社での付き合い、ストレスを買い物や飲食で解消するための支出などが減るのが原因です。
サラリーマンをやるのは、それだけで結構お金がかかるものなんですね。
政治・経済の基礎を学ぶ
投資の相談をする人の多くは「S&P500と全世界株式のどっちがいいですか?」とか「インデックスファンドと高配当ETFのどっちがいいですか?」といった銘柄選定の話ばかり気にします。
これは非常に危険な投資マインドです。
なぜなら「今良いものは将来落ちる」のが投資の鉄則だからです。
投資は「これから伸びそうなものを買う」ものであって「今良いものを買う」のは高値掴みの危険が高いのです。
では「これから伸びそうなもの」を見つけるにはどうしたらよいかと言うと、これは政治と経済の原則を学び、世界がどう動いていくかを考えることが必要です。
政治と経済は社会の両輪で、両者は切っても切れない関係です。
というか、政治はその国の経済環境を良くして国民を裕福にして国力を上げることが目的なので、政治と経済は一心同体なのです。
短期的には原則を逸脱することがあっても、長期においては必ず大きな流れに戻ってきます。
長期的な流れとは「世の中は人間が暮らしやすい方に発展する」ということであり、長い歴史の中で政治も経済も、全体的にはその方向に発展してきました。
私は1990年代に中国株投資を始めましたが、当時は「一党独裁の共産主義国家の株を買うなんてドブに金を捨てるようなもの」と周囲の人は思っていました。
しかしその頃から中国株投資を継続していた人の多くは、現在ではそれなりの資産を形成しています。
これは中国株に投資していた人達が、旧共産圏が崩壊した中で14億人の国民がいる国が発展しないわけはない、国民が暮らしやすい方向に中国は変貌していくと信じていたからです。
その背景には、中国の共産党一党独裁の内実は多くの派閥が争っていた昔の自民党のようなもので、実質的には多党政治と同じであり、地区代表の選挙制度は昔から導入されていて、多くの中国人は「選挙があるから中国は民主主義国家」と考えていて、主権在民の意識が高いことを知っていたこともあります。
こういった政治的な内情を知らずにいると判断を誤ることになります。政治について知ることは重要な投資材料になるのです。
ですから「S&P500と全世界株式のどっちがいいか」を現在のチャートだけを見て判断することには、何の意味もありません。
政治と経済の原則を踏まえて、今後20年、30年で世界がどっちの方向に進んでいくのかを考え、どっちが良いかを判断するのが投資判断というものです。
そのためには投資に関する小手先のことよりも経済と政治の原則を学ぶことが必要です。
「えー、そんなの難しそう」って思った方。
この本は近代から最新の経済理論と政治を踏まえながら、現在起きていることを非常にわかりやすく解説しているので、おススメですよ。
労働収入を見つける
「働いたらFIREじゃないじゃん!」って思う人も多いと思いますが、私は実際にFIREを実現した人で労働収入がゼロの人を見たことがありません。
私も技術系のコンサルティングやアドバイザーとして若干の収入を得ていますし、不動産投資は事業なので、金融投資収益の他に事業所得が発生しています。
FIRE関連でブログやYoutubeをやっている方々は、あそこからかなりの収入を得ています。
実際に労働収入や事業収入が全くないと、リタイアをする踏ん切りがつかないものです。
やはり「いざとなったら労働や事業で収入が得られる」という自信は大事です。
私は長年続けたサラリーマン時代に、ある程度の金融資産と不動産収入を確保していたので、それまで勤めていた企業をやめて技術系サービスの小さな会社に転職し、そこで自分の技術を切り売りする方法を学んでからリタイアしました。この収入が現在でも年間で200万円ほどあります。
仕事は文書校正やレポートの作製と、それに付随するオンラインミーティングとメールのやり取りだけなので、完全な在宅勤務です。仕事も案件ごとの受注ベースなので、常に働いているわけではありません。
現在の大企業は、実際の業務のほとんどを外注しているので、昔よりもフリーランスの需要が高まっており、さまざまな業務でニッチな労働市場ができています。
一度、自分の仕事を棚卸して、個別に切り売りできる技術を探してみると良いと思います。
どのようなニーズがあるかは、クラウドワークスやランサーズのようなギグ・ワークのプラットフォームを見ると参考になるでしょう。
今までの仕事で日常業務としてやっていたことに、意外なニーズがあることを発見できると思います。
月に数万円であればブログやYoutubeなどの広告収入で得ることもできますし、手芸や木工などの趣味があればメルカリやオークションに出品して現金化することも可能です。
こういった細かい収入を重ねると、それなりの金額を稼ぐことができます。
FIRE後の生活は幸せ?
リタイア後の生活はどうか?とか、閑を持て余さないか?という方もおられます。
私はもともと楽器を演奏したり、DIYをしたりと、基本的に引きこもり趣味の人間なので、私にとっては時間が自由に使えるリタイア生活は天国です。
特に趣味が無く、いつも人と一緒にいてワイワイ騒ぐことが好きという人は、あまりリタイア生活には向かないかもしれません。
会社で部下や同僚に囲まれて楽しく仕事をしている人は、そのまま会社員を続けるのが一番幸せなように思います。
リタイア後には「とりあえず付き合う」という相手が全くいなくなりました。
サラリーマン時代には、いろいろな付き合いで、あちこちの会合や宴席にでていましたが、それが現在ではゼロです。
これは私にとっては幸せなんですが、みなさんにとってはどうでしょうか?
いま私が人と会うのは、本当に自分にとって大事な相手か私に会いたいと言ってくれる方と、趣味の音楽仲間だけです。
こういった生活が幸せに思えない人は、リタイア生活を持て余してしまうかもしれませんね。
いつも仲間と一緒に飲み歩くのが大好き!という人は、リタイア後の出費も大きくなるのでリタイアのハードルも上がります。
そういった人にはリタイアは向かないと思います。
でも、会社は定年まで勤めればその後に否応なくリタイア生活になってしまうので、いつも会社の仲間と一緒にいるのが幸せという人は、定年後はどうするんでしょうね?
リタイア後に閑を持て余してしまいそうで心配な方は、定年を迎えた後が大変なように思えて、ちょっと心配です。
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