FIRE実現のために・FIREの嘘と真実

近頃はFIRE なんて呼ばれて大人気のようですが、その内容は「経済的に自立して、早期リタイアしましょ」という昔からある話です。
私は50歳で会社員生活をリタイアして沖縄の島で暮らし始めました。ちょっと遅めのFIREになるんでしょうか?

今日はFIREの元祖・クリスティー・シェンさんの著書をお題にお話しします。
前回のお話「FIRE実現のために・いくら必要?」もご参照ください。

この本の内容をザックリ言うと「投資信託を毎年4%で取り崩せば元本は減らないから、それで生活費を賄えば一生働かずに暮らせる」ということです。
それ自体は嘘ではありませんし、基本的には積立投資信託に関する優れた内容の本だと思います。
ただし「最速でお金から自由になる究極のメソッド」じゃないんですよね。
一番大事な部分がサラっと書いてあるんで、多くの人の誤解を生んでいるようです。

今日は、そんな誤解に関してのお話。

投資信託は「安全だが遅い」

まず最初に投資信託で、どのくらいのリターンが得られるのかを冷静に計算してみましょう。

著者がやっている投資信託のような手数料が最も安くリターンの安定している「全世界株式インデックスファンド」や「S&P500インデックスファンド」の長期運用における平均年利は、手堅くみると6%程度と言われています。(著者は債権も組み入れていますが、債券は株式投信にくらべてリターンが下がります)

そこで年利6%で毎月10万円を年複利で30年間積み立てるといくらになるか計算してみましょう。
計算にはこのサイトが便利です。

結果は3,600万円の投資に対して7,900万円のリターンです。

約8,000万円を年間4%で取り崩せば320万円。税引き後なら約250万円です。
私たち夫婦二人(持ち家、子供なし)の年間生活費が大体250~300万円ですんで、二人ならなんとか「働かずに普通に暮らす」ことが出来そうですね。

この積立投資プランならば、23歳から毎月10万円の積立をすると53歳でFIREを実現できます。
今は定年再雇用で70歳まで働くのが普通の世の中になっているので、これでも十分に「早期リタイア」と言えるでしょうね。

でも「最速」という気はしませんよね?

積み立て投信の最大の武器は時間

それは当然で、積み立て投資信託の最大の武器は「時間」だからです。

先ほどのサイトでの計算結果の右端「実質利率」を見てください。
1年目は2.5%、2年目は5%、3年目は7.5%とリターンは微々たるものです。
一度暴落相場になれば、こんな利益は吹っ飛んで赤字になってしまいます。

これが10年目では27%、20年目では65%、27年目では100%(投資金額が2倍になるということです)、30年目では118%と、最後になって利益が大幅に拡大します。最後に一番儲かるのが複利による指数関数の効果なんですね。

もちろん30年間の間に何回かは市場の大暴落が起こりますが、暴落からは5年程度で前の水準に戻りますし、その時の成長スピードは異常に高くなるので、その間に積み立てた分の利益率も異常に高くなります。
長期での平均リターンは6%とはそのような「短期変動」を全て織り込んだ「平均」なんです。

短期では+50%もー50%も起こり得るのが株式投資信託で、それに対抗するには長期で運用して平均値に近づけるしかありません。

ですから20代からインデックスファンドを積立てて50代でFIREはあり得ても、それを30代で実現するのは、非常に困難なものだということがわかります。

なぜ著者は30代でFIREできたのか?

「でも、この本の著者は30代でFIREしてるじゃないか!」と反論がきそうですね。

著者も私たち同様の「子供無し夫婦二人」ですが、彼女らは10年ほどで1億2千万円相当のインデックスファンドを積み上げて、投資から毎年400万円を取り崩すFIREを実現しています。

この本は投資方法については詳しく書いてあるんですが、この「10年間で1億2千万円のインデックスファンドを作る方法」については系統立って触れていません。その理由は、多分それを説明すると読者に「無理!」と思われて本が売れないからだと思います(笑)

この本の中には「最初に1,000万円でインデックスファンドを買った」と書かれています。その時の著者は20代半ばでしょう。

なぜ最初からそんな金額のファンドが買えたのか?

これも著書の中に書いてありますが、この夫婦は二人とも年収1,000万円くらいのITエンジニアなんですね。
そして徹底的な倹約生活をして、残ったお金でインデックスファンドを買っています。
これは同一労働同一賃金が当り前の海外だから新卒でも1,000万円の給与が貰えるわけで、年功序列型賃金の日本では、ちょっと難しいですね。

彼女らのように世帯収入が2,000万円で倹約生活をしていれば、少なくとも毎年1,000万円以上の積立投信ができるわけです。
これを12年続ければ投資金額だけで1億2千万円を超えて、30代でFIRE達成できますね。

実際にこの著者は投資開始後に2007年のリーマンショックに見舞われていて、早期リタイアを達成したのは2015年頃のようですから、FIRE達成時の総投資金額は8,000万円以上になっていたと思われます。
本来ならもうすこし時間がかかったものを、リーマンショック後の株式市場の急激な回復で数年早まった、というのが実像でしょう。

この本の真実

この本に書かれている一番重要なことは「4%ルール」ではありません。
4%ルール自体は以前の投稿で紹介したように、1970年代から言われていることです(逆にそれが今だに有効ということは、歴史的検証に耐えた確実な法則だということです)。

一番大事な部分は「いかに収入を増やして、倹約に努めるか」ということです。

著書の中でも「いかにして高収入を得るか」についての著者の努力が紹介されています。
著者は大学進学の時に「学費が安く、かつ高い収入が得られる職業に就くための学部・学科」を選ぶことについて、かなりのページを割いて記しています。

これは投資の大原則である「勝負の決めては駒の上げ下げ」。
つまり投資チャンスにまとまった金額ができなければ大きなリターンは得られない、ということです。

投資金額10万円が10倍になっても100万円で大したことはありませんが、1,000万円を投資すれば1億円になってFIREできるわけです。

この本を読んで「投資信託で安全投資をしてFIRE」は不可能ではありません。
そのためには30年以上積立信託投資を続けるか、株式市場の暴落時に多額のインデックスファンドを購入すれば、FIREは可能です。
しかし、それを10年そこらで実現するには、それなりの投資元本を作るためのリスクをとらなければならないのです。

100万円は10万円の10倍じゃない

投資金額がある程度の金額になってくると、気が付くことがあります。
それは100万円は10万円の10倍でなく、1000万円は100万円の10倍じゃないということです。

5%の利率で運用した時に得られる金額は、10万円なら5千円、100万円なら5万円、1000万円なら50万円です。
5千円なら一回飲みにいけば無くなります。同じように使っても5万円なら4万5千円余り、50万円ならば49万5千円余ります。

こうして残ったお金を再投資すれば、同じように使っても投資金額はどんどん増えていき、その積み重ねが大きな差になります。

また10万円では不動産投資はできませんが、100万円を頭金にすればボロ物件ならばなんとか買えます。
この人などは少額資金からボロ物件を買って成功しています。
もちろん厳密な計算と相当の労力をつぎ込んでいますが、収益性の計算を徹底していれば、こういった投資も可能です。

1,000万円が頭金ならば本格的な不動産投資ができますし、融資の金利や借入金額を低く抑えることができるので、安全性も高まり、リターンも大きくなります。

これを「お金のスケールメリット」と言います。
お金持ちがさらにお金持ちになるのは、特別な投資案件が回ってくるからではなく、スケールメリットを使っているからなんです。

若くして引退する方法

キビシイ話になりますが、普通のサラリーマンが「30代でFIREする!」を実現するためには「20代でスケールメリットが得られる投資元本を作る」しかありません。

それを実現するための方法は次の3つになるでしょう。

・個別銘柄投資
・不動産投資
・事業を起こす(副業でも可)

この点については、ロバート”金持ち父さん”キヨサキ氏が繰り返し著書の中で強調しています。

もちろん株の個別銘柄投資や不動産投資に関しては、それなりの勉強や調査、熟考が必要ですが、副業に関しては、セドリ、ブログや動画の広告収入、趣味の現金化など、ネットの進歩でほぼノーリスクの小規模事業を興す可能性が大きく広がっています。

本気で若くして引退したい方は、投資信託一本に頼るのではなく、まず収入を少しでも増やす可能性を考えてみたほうが良いと思います。

10年で引退は可能か?

答えから言えば可能だと思います。

私は20代から趣味程度の株式投資をやっていましたが、ずっと普通のサラリーマン生活を送っていました。
それが39歳の時に勤務先が他者に吸収合併されることになり、サラリーマン生活に愛想が尽きて早期リタイアについてマジメに考えるようになりました。

それまでにロバート・キヨサキの本を読んだり、欧米の同業者が「若くして引退すること」を目標にしている姿を見て、その影響を受けていたこともありました。

それで中国株投資や賃貸不動産投資について学び、実践して45歳で会社員をリタイアしました。

その2年後に友人の会社のスタートアップで3年ほど働き、50歳でそこを退職して、今では完全にリタイア生活を送っています。
いや、実際にはいまだに友人の会社から仕事の依頼がくるので、楽しめる範囲での仕事は続けていますが、ネットで完結する仕事なので時間や場所の制約はほとんどありません。
だから沖縄と横浜を行ったり来たりできますし、その仕事がなくなっても十分に持続可能な経済基盤を築いています。
今後、年金が受給できるようになれば年金分は全額小遣いにできるので、その日が来るのが楽しみです。

それはともかく、早期リタイアを決心してから完全リタイアまで約10年。
自分の経験に基づいて「10年間で早期リタイアは可能」と思うわけです。

若い時からやっていた株がそこそこの金額になっていたり、中国株の成長期や、不良債権不動産への投資ブームになる直前だったりと、幸運があったことは確かですが、そういったチャンスはどの時代にも姿を変えて存在するものです。

例えば今年の年初にはアマゾン、グーグル、テンセント、アリババなどのドット・コムバブルがありましたし、リーマンショックの回復期やアベノミクス導入時に株式投資をしていれば、かなりのリターンになりました。

いろいろな問題が起きている不動産投資でも確実に利益を生む物件は存在しています。
生活保護の範囲の家賃で収益があがる格安物件を買って、困窮者世帯向けの賃貸物件経営をして成功している人は、いまでも多数います。
困窮者ビジネスは人の弱みにつけこんでるように思われますが、逆にハイリスクの入居者に住居を提供する社会貢献にもなっている、素晴らしい仕事だと思います。

大事なことは、何か一つの方法を盲目的に信じるのではなく、広い目で投資手法とその時々の潮流を見て、綿密な計算の元に投資を行う判断力と決断力と行動力を磨くことだと思います。

そして、このような投資機会に乗り遅れないためには、少額からでもリスクを取って投資を続けることしかありません。
「勉強してから投資しよう」と言う人で実際に投資を始める人はいませんが、許容範囲内のリスクで少額でも投資を始めた人は、自分のお金がかかっているのでいろんなサイトを見たり、本を読んだり、自然に勉強するようになります。

自転車の乗り方を憶えるのと一緒で「まず乗って見ないと話にならない」のは、投資も同じです。

ただし、今回紹介したFIRE本を含めて、投資関連の本は、その背景や行間、時には著者が書いていないことまでを含めて読み取ることが大事で、それができるようになればFIREの実現に大きく近づけるのではないでしょうか。

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コメント

  1. deds より:

    FIREが結構楽勝簡単みたいな風潮になってしまっているけど、結構罪深いな

    • Gomi より:

      コメントありがとうございます。
      投資信託って数字で詰めていけば綺麗に答えがでるので、そこをちゃんとやると具体的なロードマップができると思います。

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